噴火の歴史は地形が教えてくれる

楓雅の時事、箱根山は4月から続いていた活発な火山活動がやや落ち着きをみせているが、神奈川県温泉地学研究所の萬年一剛主任研究員は1週間に1回ペースでの現地入りを欠かさない。
温泉水の化学成分や噴き出す蒸気の勢いに変化がないか目を凝らす。
箱根町の担当者との連絡交換も日課で「地域の安心を守る」決意は固い。
全国の火山観測のとりまとめ役が、国の火山噴火予知連絡会の藤井敏嗣会長だ。
東京大学でマグマ学を35年教え「ミスター活火山」の異名をもつ。
噴火予知連は年3回、火山の最新動向を検証する会合を開く。
全国から集まる研究者らの報告を受け、科学的に活動状況を評価する。
5月の口永良部島や8月の桜島の爆発的噴火の際は臨時会合の緊急招集を決めた。
火山への世間の関心が高まっている中、学者の責任は重くなっている。
藤井会長は関係者に発破をかける。
気象庁には火山活動を見守る火山監視・情報センターが東京のほか、仙台、札幌、福岡の各管区気象台にある。
情報連絡の責任者が地震火山部の小久保一哉・火山活動評価解析官だ。
4月に着任してから「落ち着く日がなかなかない」という。火山の状況把握は「いろいろな人の意見を聞いたうえで判断する」よう心がけている。
火山の調査に欠かせないのが地形図。関係者の必携アイテムとなっているのが、急な崖など細かな地形も赤色の濃淡で一目で分かる「赤色立体地図」だ。
アジア航測の千葉達朗技師長(58)が02年に開発した。
航空機を使ったレーダー計測データをもとに、急斜面ほど赤色に、尾根は白っぽくなるように表現した。
もともと富士山麓に広がる青木ケ原樹海の調査で使われ、その見やすさが評判になった。
自身も火山研究者で噴火の歴史は地形が教えてくれると強調する。